マケデコに参加し、話題となっていあ後場エントリーの話を書いてみようと思います。
この話は2018年~2020年中盤あたりまで私が実装していたストラテジーの話です。
エッジ(優位性)の調査から、エッジを発見した後トレードへ移行し稼ぎ、そして中断した経緯も含めて記載しております。

諸行無常、驕れる者久しからず、システムの栄枯盛衰を私の駄文でお伝えして参ります。

なぜ後場なのか?

元々、私は日中の寄り引けでトレードしていたのですが、前場と後場でストラテジーを分けた方が、収益が改善するのでは?と考えたことが発端です。

寄り前に入手した情報は後場には劣化しており、もっと後場を説明する変数は無いのだろうか?と思ったわけです。

他にも後場寄りは,
・出来高が高くエントリーしやすい
・サラリーマンの事情にも適応してお昼休みに注文が入ったのか管理しやすい
というメリットもあります。

日本株は日中ショートバイアスがある。

実戦金融データサイエンスのページ45にも記載ある通り、日本株の日中の動き、寄りから引けにかけてのリターンを累積してゆくと、マイナスが積みあげられてゆきます。

この話は良く知られた話で2012年の時点で私も知っていたので、かなり前から広く知れ渡っていたにも関わらず消えずに残っているようです。

これを見ていて、後場のことを考えると疑問が沸きます。
これって、前場+後場の動きであるわけであるから、後場だけだったらどんなアノマリーが残っているのだろう?と疑問が沸いたり、もしかして午後は前場の反対の動きをするのではないだろうか?とも考えるのです。

少なくとも、前場が大きくプラスであれば、上記のアノマリーによりマイナス側へ回帰することがありそう、と普通の人は考えるはずです。

要するに後場はリターンリバーサルが効く時間ではないのかと。

更にリターンリバーサルの効く銘柄を思考してみる

元々、私は四季報CD-ROM等で企業価値等、自分で作った指標を求め、時価総額との比較で割安ならば投資するスタイルを取っていたため、バリュー投資的な考え方をしがちです。

資産バリューの考え方では、その会社の資産に着目し、単なるバランスシート上の数字だけで無く、その会社の保有株や不動産の評価をして、解散価値を求め、割安か否かを判断して投資判断をします。

その考え方の延長で考えると、保有株の多い会社の株価はインデックスに収斂するように動く、もしくはリターリバーサルが強い傾向にあるのでは?と考えるわけです。

その会社の株価が下がっていても、保有株の価値が上がっていれば、時間とともに資産効果で値上がる、そしてその逆もある。

そんな中で金融株って保有株すごいよな、特にメガバンクは各社数兆円の株式を保有していたはず、と思い、メガバンクだけでユニバース組んで分析したら面白いのでは?と思考が進んでゆきます。

思考を巡らせ、調査してみた結果は期待以上だった

メガバンクとして選出し、三菱UFJ、三井住友、三井住友信託、みずほ、りそなの5銘柄でユニバースを組んで、分析してみました。

余談ですが当時、2017年あたりはk-dbというサイトで前場後場に分けて4本値データを配信してくれていました。しかしながら規制により公開されなくなり、次にはgoogle finance api に頼りましたが、それも停止。最後は自前でストレージするか、JPXデータクラウドのtickデータに頼ることとなっています。

話は戻し、上記ユニバースで平均値を出し、前場引けにおける前日比リターンと後場のリターンで相関性を調査するとかなり強い相関性が得られました。PCの中にまだデータがあったのでシェアいたしますが、corr^2=0.0267もあり、相当強いです。

2015年6月から2018年8月まで

ちゃんと想定した通り、負の相関でリバーサルが効いている事が示されました。

バックテスト結果、そして俺は稼ぐ

エッジ見つけた当時は仮説によって見つけたエッジでありながらも、何で?と言う気持ちはありました。何故なら、エッジが強すぎる、しかも大型株で。

理由はともあれ、理由がわからなくともトレードするのが自分のスタイル。

下は自分が行った最後のバックテスト結果です。ロジックはほぼリバーサルで味付けは少なめです。確か2017年はじめ辺りから2020年の終盤まで使いました。何故なら2020年の中盤かと言うとその辺りから全く稼げなくなってしまったからです。

クジラは日銀だったのか
それとも市場が学んだのか

私の中ではこのシステムは主力艦隊であり、なぜ効かなくなったのか、かなり考えました。
後場のリターンリバーサルの効果は、実はTOPIXでも私は確認しており、それは銀行株が引っ張っているのか、それともインデックスとして存在し、銀行株では強いのか、タマゴか先か鶏が先かでどっちなんだろう?と思っていました。

ある日、何かの記事で読んだのですが、どうも日銀のETF介入は午後に行われる、そして前日比で下がった日のみ行われるとの情報を得て、何故か納得しました。
という事はETFの買い支えが無くなったとしたら、この後場リターンリバーサルは消え失せるのだろうかと思ったわけです。

そこで、確認してみると2021年では下のように買い支えは殆ど無くなってしまっています。
また、2020年の買い支えに関してもコロナショックの時がどうも最高のようでそこからは買い支えは萎む一方だったようです。

Bloombergより参照

そして、もう一つ考えるのが、メガバンの資産効果の減衰。
近年、海外投資家を受け入れようとする日本は株の持ち合いを減らそうと各所に圧力をかけてきました。メガバンクは持ち合いの象徴であり、その量は年を重ねるにつれ、減ってきています。

日経より拝借

つまりは日銀というクジラの不在、市場が資産効果は減衰していくことを学んだのか、いずれにせよ、後場リターンリバーサルは消失した理由はファンダメンタル的に説明できそうでした。

あらたなエッジを探す旅へ。俺たちの旅は終わらない。

私は基本的にファンダメンタル的な発想でエッジを探しています。
仮説を立て、検証し、簡単にバックテストをしながらロバスト性を確認しては、の繰り返しです。

バルチック海運指数と海運株はどのような関係なのか?、WTIと原油株は?など簡単なことから、各社のアニュアルレポートを読んで収益ドライバーは何なのか、それは説明変数として入手できるのか?など考えてきました。

投資とは人と違う事をしているのか、を常に自分に問いかけが必要で、それが収益の源泉とも私は思っており、是非とも自分なりに仮説を立てて検証し、あらたなエッジを探してください。